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膵炎のメカニズム

膵炎とは、膵臓に炎症が起きる病気です。

 

膵臓には、外分泌機能と内分泌機能があります。

 

外分泌機能

蛋白質分解酵素であるトリプシンや、脂肪分解酵素であるリパーゼ、
糖質分解酵素のアミラーゼなどの消化酵素を産生する働き。

 

内分泌機能

インスリンやグルカゴンなどのホルモンを産生する働き。

 

膵臓内では、消化酵素は働きません。
食べ物が十二指腸を通過する際、消化酵素が分泌され、
消化管内で初めて酵素活性を発揮し、消化・分解に寄与します。
ですが、何らかの原因によって消化管への分泌が阻害されると、
防御機構が破綻し、膵臓内で消化酵素が活性化し、
膵臓組織や周辺組織の自己消化を始めてしまいます。
このような状態になっているのが「膵炎」と言う状態です。

 

膵炎になると、血中・尿中膵臓酵素値が上昇し、
大量の消化酵素が血液中に入るので血管内皮が損傷されてしまいます。
その結果、大量の酵素が血液中に入るので血管皮内が損傷されます。
ですから、凝固系の障害を示す検査値の変化にも注意しなければなりません。

 

急性膵炎

急性膵炎の原因の多くは、アルコールと総胆管結石です。
男性の急性膵炎は、アルコールに起因する割合が女性に比べて高くなり、
膵炎は重症化すると多臓器不全となり死に至ることがあります。

 

慢性膵炎

慢性膵炎は、炎症が6ヶ月以上持続し、膵臓が繊維化した状態です。
慢性膵炎は、「代償期(膵機能が保たれている状態)」、「非代償期(膵機能が低下した状態)」に分類されます。

 

非代償期になると、消化酵素の減少による脂肪性の下痢、
体重低下などが見られ、内分泌機能も低下するのでインスリン分泌が減少し、
血糖値の上昇を引き起こします。

消化酵素の役割

蛋白質分解酵素「トリプシン」

蛋白質分解酵素である「トリプシン」は、膵臓内では、不活性化(トリプシノーゲン)、
十二指腸内では、エンテロキナーゼによって活性化されます。

 

糖質(炭水化物)分解酵素「アミラーゼ」

糖質(炭水化物)分解酵素である「アミラーゼ」は、でんぷんやグリコーゲンなどの糖類を分解します。
アミラーゼは、膵臓と唾液腺で産生されます。

 

脂肪分解酵素「リパーゼ」

脂肪分解酵素である「リパーゼ」は、中性脂肪を分解します。
膵臓特異性が高いです。

膵炎を示す検査値とその他の重要な所見

膵炎になると、Amy、リパーゼ、トリプシン、FDP、D-ダイマー、Gluの値が高くなり、
Caの値が下がります。

 

腹部エコーやCTなどによって、急性膵炎の場合は「膵臓の腫大、滲出液の貯留」が確認され、
慢性膵炎の場合は、「膵石」や「膵管の不整と拡張」、「膵嚢胞」などが確認されます。

膵炎の判断のカギはアミラーゼとリパーゼ

膵炎を診断するカギとなるのは、「アミラーゼ」と「リパーゼ」です。

 

アミラーゼ

糖質分解酵素であるアミラーゼは、分子量が小さく、
膵炎や膵がんによって膵組織が破壊されたり、膵液がうっ滞すると、
誘導酵素や逸脱酵素となって血中や尿中に容易に流れ出てしまいます。

 

アミラーゼは、膵臓のほか唾液腺からも分泌されていますから、
数値が上昇したからといって、即、膵炎と判断することは出来ませんし、
上昇の程度が膵炎の重症度を示すというわけでもありません。

 

アミラーゼには、分子構造の異なる膵臓型(P型)と唾液腺型(S型)の
2種類のアイソザイムがあります。
そして、膵臓由来であるかどうかは、
アイソザイムが、膵臓型(P型)と唾液腺型(S型)のどちらであるかを調べることによって確認できます。

 

リパーゼ

脂質分解酵素であるリパーゼは、膵臓特異性が高く、その殆どが膵臓で産生されます。

 

ですから、アミラーゼ値と共にリパーゼ値も上昇している場合は、
膵炎と考えることができます。

 

慢性膵炎で見られる脂肪性の下痢は、リパーゼが十分に産生されず、
脂質の消化吸収が出来ない状態を反映しています。

 

その他、膵臓由来の逸脱酵素として、「エラスターゼI」、「トリプシン(PSTI)」などがあります。